Tag: #天日干し #干し椎茸 #椎茸 #紫外線 #ビタミンD
皆さんは椎茸の「天日干し」をご存じですか?文字通り、天日(太陽)の力を利用して乾燥させる手法のことを指します。多くの人がお米や、干し柿などの天日干しをイメージすることでしょう。今回は、「干し椎茸の天日干し」のお話から、杉本商店が紫外線を当てて椎茸のビタミンDを増やしている工程について説明していきます。
「天日干し」は真夏にしかできません。椎茸を乾燥する方法として、近年まで天日乾燥が行われていたと誤解されがちです。しかし天日乾燥は低温で乾燥するために美味しくないというデメリットがあります。原木栽培の椎茸は採取直後から腐敗が進み易く、天日でゆっくり乾燥させたのでは刻々と品質が劣化していくことになるためです。真夏の強い日差しであれば良いのですが、収穫時期の春や秋の日差しは弱く、天日乾燥に適しません。ただし、近年になってポリ袋が出現するまでは、干し椎茸の長期保存が難しく、消費地では適宜、梅雨明けの真夏日に天日干しを行って乾燥状態を維持していました。すなわち産地での天日乾燥ではなく、消費地での天日干しが行われていたのです。
精進料理のバイブル「典座教訓」には、真夏の灼熱の日差しの下で、敷き詰めた瓦の上に椎茸を並べて天日干しをしている年老いた典座の話が出てきます。
道元が「なにもこのカンカン照りの中で、こんな苦しいことなどを」と問いかけると、「今、乾すにはいちばんいい。ものには、時、旬がある。この時間をはずして、いつ乾せばいいかね。」という答えが返ってきたそうです。
真夏に瓦を地面に敷き詰めた上に干し椎茸を並べて天日干しする方法は上下から熱が椎茸に加えられてカラカラに乾燥できる良いやり方ですね。
画像はイメージです
では、産地ではどのように乾燥が行われていたのでしょうか?実は、産地では少なくとも1800年頃から既に高温乾燥が主流でした。焚火や炭火による高温での乾燥は、椎茸のうま味成分をより多く引き出す方法として理解されていました。また、香り成分についても同様に高温乾燥が必要でした。さらに、椎茸をカラカラに乾燥させて水分率を低く保つことで、風味の急速な劣化を防ぐことができました。
1930年に出版された椎茸栽培の解説書「山の光」には天日乾燥の欠点として以下の点が挙げられています。
・天日乾燥は低温のために乾燥中に品質が悪化してしまう。
・干し椎茸特有の芳香と色合いが絶対に出せず見た目が悪くなる。
・カラカラに乾燥することができない。
・カビなどを発生し長期保存できない。
・見た目が悪く、風味も良くないので市場価値がない。
ただし、自分たちで食べる家庭用の場合は長期保存する必要がありませんし、販売目的でなければ高品質である必要もないので、スライスするなど早く乾燥する工夫をして風当たりの良いところに置くことで、いつでも天日乾燥することができます。
原木栽培のしいたけは無農薬で全く日持ちしませんので、採取直後に生産者が熱風乾燥します。(40~55℃で20時間前後)
乾燥機がいっぱいになるとそれ以上採取しても椎茸が痛むので、乾燥機がちょうどいっぱいになるように椎茸を採取していきます。このため原木栽培の椎茸はいろんな形や大きさで採れてしまいます。しかし採取直後の新鮮な椎茸を高温で一気に乾燥していくので、風味は最高に美味しい干し椎茸になります。
椎茸のうま味は天日乾燥だけでは十分に生まれません。そのため、古くは薪火乾燥や炭火乾燥などを施していましたが、その古式ゆかしき製法を今に活かしたのが杉本商店独自の遠赤外線乾燥仕上げです。
生産者によって当社工場に持ち込まれた干し椎茸は、さらに遠赤外線乾燥で水分率9%以下に乾燥させます(通常は12%程度)。240℃のセラミックパネル直下を4分ほどかけて通過させ、椎茸の内部温度は80℃に達し虫の卵まで蒸発します。当社は加熱と選別技術だけで虫の卵ゼロを実現し、無農薬の原木路地栽培でありながら世界で唯一、コーシャ認証を受けています。(ユダヤ教では虫を食べてはいけないことになっているため電子顕微鏡で一枚一枚検査されて認証されます)
高温乾燥で味と香りを引き出してから天日干しを行います。天日干しのメリットは、ビタミンD2が増えるということです。ヴィーガンでもビタミンDだけは動物性のビタミンD3をサプリで摂っている方が多いですが、干し椎茸を天日干しすると植物性のビタミンD2が大幅に増えます。D2とD3の効用は同じです。
干し椎茸に含まれているエルゴステロールという物質が紫外線の作用でビタミンDに変化するのです。
当社では以前、毎年真夏に天日干しを行っていましたが、真夏の強い日差しでないと十分な紫外線が得られないこと、雲が出ると日差しが遮られたり、屋外作業なので異物の混入問題など多くの課題がありました。
現在は遠赤外線乾燥仕上げ工程の最後に工場内で紫外線を照射して、全食品1位のビタミンD含有量になっています。
文部科学省食品成分データベース掲載の最もビタミンD含有量の多い食品は乾きくらげで128.5μg/100gですが、当社の干し椎茸(香信)はさらに大幅に上回って242μg/100gです。
杉本商店の真夏の天日干し作業(2008年頃)
現在は全ての椎茸に均一の紫外線が照射されています。
自分で紫外線を浴びたくないひとは、干し椎茸に紫外線を浴びさせるのがおすすめ!
干し椎茸を自宅でさらにビタミンDたっぷりにするための天日干しの方法をご紹介します。
1.干し椎茸をザル等に重ならないように広げる。
2.傘の裏側のヒダを上に向けて日光に当てる。30分~3時間ほど必要に応じて、天日干ししてください。短時間でも効果がありますが、長時間当てるとそれだけ効果があります。紫外線予報が「強い6」以上だったら1時間の天日干しで十分です。 季節によって紫外線の量は異なりますので加減してください。吸湿した干し椎茸を乾燥させるときはカラカラに乾くまで天日干しします。
3. 強い日光に晒されると、干し椎茸の傘裏は白っぽく変色します。これは十分な紫外線が当たった証なので白くなれば天日干し完了です。
4.充分冷ましてから袋に入れて下さい。天日干し直後の熱を帯びた状態でポリ袋等に入れると袋の中で結露します。
以上のやり方で、ご家庭でも最高の天日干しを楽しむことができます。
神戸女子薬科大学(現:神戸薬科大学)の実験では、
紫外線量3時間あたり14.6mW/㎠の日射のとき、
干し椎茸1枚あたり0.50μg (20 IU)だったビタミンD2は、
1時間で12.20μg (488 IU)(24倍)、
3時間で13.70μg (548 IU)(27倍)と増えました。
1時間と3時間の差は少ないので、
1時間で十分と言えるでしょう!
つまり、
お日様に1時間当ててから、
水戻しして調理した干し椎茸は、
たった一枚で、
成年1日のビタミンD必要量の8.5μg (340 IU)をまかなえますー☆
気象庁発表のUVインデックスが
「強い」6以上の時、天日干しは1時間で十分です。
参考:
「シイタケとビタミンDについて」(神戸女子薬科大学)
「日光照射によるシイタケ中のビタミンD2増量効果」(神戸女子薬科大学)
「UVインデックスを求めるには」(気象庁)
紫外線指数 (UVI) は、紫外線総量 (UV Irradiance) を 25 で割った値とされています。紫外線総量は W/m²(ワット毎平方メートル)単位で表され、1 mW/cm² = 10 W/m² です。したがって、紫外線量 14.6 mW/cm² (これをワット毎平方メートルに換算すると146 W/m²) の 3 時間分を紫外線指数に変換すると、以下のように計算できます。
146 W/m² ÷ 25 = 約5.84
したがって、3時間あたりの紫外線量14.6 mW/cm²の日射量は、紫外線指数では「中程度」(UVI 3 - 5)と「高い」(UVI 6 - 7)の間くらいに相当すると言えそうです。
今回、干し椎茸の天日干しについて、その歴史から現代の製法、そして杉本商店のこだわりまでを詳しく解説してきました。真夏の強い日差しでの天日干しはビタミンDの含有量を引き上げますが、現代では高温乾燥に遠赤外線乾燥仕上げと紫外線照射を用いることで、より効率的かつ安全に高品質な干し椎茸を提供することが可能となりました。
家庭でも椎茸を天日干しすることで、さらにたっぷりのビタミンDを引き出すことが可能です。是非、この記事を参考に、最高の干し椎茸をご家庭で楽しんでいただければと思います。特に、ビタミンD2が大幅に増加する天日干し法は、健康に気をつけている方々にとっても一石二鳥の方法といえるでしょう。我々の身体は日光を浴びることによってビタミンDを自然に生み出しますが、普段日焼け止めを塗って外出している人には日光浴の効果がありません。紫外線を浴びたくない人は、自分の代わりに干し椎茸に紫外線をたっぷり浴びてもらってください。
今回のブログ記事を通じて、干し椎茸の天日干しについて理解を深め、また杉本商店の干し椎茸のこだわりと特長を知ることができたかと思います。家庭での天日干し法についても具体的な手順を説明しましたので、気軽に挑戦してみてはいかがでしょうか。おいしいだけでなく、ビタミンDも補給できる干し椎茸を、ぜひ日々の食生活に取り入れてみてください。